2-疑惑

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なぜ知っているのかは不思議だが、住所を知っている彼女だからこそ、この手紙が送れたと考えるのが妥当ではないだろうか。 一点の曇りもない身である私が、不倫相手と愛し合い、離婚を切望しているかのような手紙を夫宛へ。 字をよく見たが、女性とも男性ともつかないような字体で書いてある。 消印は、新宿。 (うち)からかなり遠いが、あの(ひと)の家の近くなのか? 新宿近くならタクシーで一緒に帰ったというのは、嘘になる。 出先で投函したのかもしれないし、わからない…。 この手紙を読んだ夫が、どんな行動に出ると思って書いていたのか。 夫が、私の不倫を疑い、責め立て、離婚するストーリー? 私は、なにもしてないのに? 離婚させる為には、家に行き、嘘の手紙を送る? 反対に慰謝料を請求される立場なのに、そこまでするのだろうか…。 そもそも、夫が不倫をしていたとしても、私にはばれたくない筈なのに、不倫相手にわざわざ住所なんて教える人がいる? 教えたということは、2人で共謀したことなの?? そう、私がもうひとつ引っかかったこと。 ゴールデンウィークなんて、基本的に不在である可能性は高いと考えるだろう。 それが、帰ってきて着替えてくつろごうとした、あのタイミングで来たこと。 あの(ひと)から聞いたのか、夫が送ったのか、そこまではわからないが、出先から今から帰るとか、とにかく何かしらのメールをしていたのではないかと思うのだ。 家に着いたのは混んでいたから遅くなったが、それでも夕方の5時頃だったと思う。 あまりにもタイミングが良すぎる気がした。 考えているうちに、私は、夫が不倫しているかもしれないという不安より、もう不倫相手と決めつけた女の行動に対して怒りを覚えてきていた。 そして、その女の前に、化粧もせずに部屋着で対応した呑気でアホな自分にムカついていた。 幸が薄そうとは思ったが、髪を綺麗にして(おんな)を前面に出しているあの(ひと)と14年もの月日と、幸せに甘えて、女磨きを忘れていた自分との差。 その差を感じて、余計に少しでも綺麗な自分、幸せな自分を見せつけてやりたかった。 私が夫の妻だという、女のプライドか。 まだ夫への追求も終えてないのに、私の中では二人の関係は明らかのように思えた…。
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