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4-詮索
ほとんど寝れずに、朝を迎えた。
不倫を知る前と変わらない朝。
もしかしたら、少しぶっきらぼうかもしれなかったが、送り出すまでいつものように振る舞った。
あんなに酷いやり取りを見て、この期に及んで、物分かりが良いような事を考える私も相当な物好き。
いや、頭のネジが吹っ飛んでいる、お似合いの夫婦と言われてしまうかもしれないが、夫の初めてが私だったから、男だし遊んでも仕方ないと思う所はある。
でもそれは、あくまでも遊びであって、相手が本気になるような素人ではない。
遊びもある程度の理解をしていたつもりだが、そんなに甘いものではなかった。
夫への喪失感は果てしなく大きい。
どうしてこうなってしまったのか…。
もともと、夫はこういう人だったのだろうか。
私は、夫と結婚することになった日の事を思い返していた。
*********
「もしかしたら妊娠したかもしれない…」
検査薬で陽性が出た時、私は動揺しながら真っ先に真治に連絡をいれた。
「ごめんな」
最初の一言で、凍りつく。
付き合いは長いけれど、学生の私には結婚なんてまだまだ先の事で、それは去年まで学生だった真治も一緒なのだ。
それなのに、何を期待したのだろうか?
妊娠して堕ろすことが考えに無かった私は、謝られて体が金縛りにあったように動けなかった。
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