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1-訪問者
私は、田中 結花33歳 。
一歳年上の夫 真治と、現在10歳(小学5年生)になる優真の3人家族。
真治とは、大学生の時サークルで知り合い、すぐにお付き合いがスタート。
お互いが初めての恋人だったから、手を繋いで、キスをして、結ばれて。
何もかもがドキドキの連続で、全てが楽しい思い出ばかり。
そんなお付き合いも3年半。
私の大学生活も終わりに近づく12月に転機が訪れる。
社会人と学生、生活環境が変わって会う回数は以前よりずっと減っていたし、まさか!というタイミングで私は赤ちゃんを授かったのだ。
当時の就職活動は甘くはなく、何十社もエントリーシートを提出して、面接まで辿り着くのもひと苦労な状態の中、なんとか内定を取れた会社に就職せずに、卒業と同時に結婚して、そのまま家に入った。
私の中で、堕ろす選択肢は全く無かったから後悔はしていない。
けれど、卒業後仲良し友達とのグループLINEも、皆の会社であった上司やお局さんの話、辛い事や、飲み会話が飛び交う中で、『既読』しかつけられない事が多くなっていった。
子供が幼稚園や、小学校に入る頃にはママ友達ができて、学生時代の友達とは疎遠になっていったが、20代後半になってくると、年賀状付き合いになりつつあった友達とも、結婚式、出産などのお祝いイベントが出てきて、集まる機会が少しずつ増えていく。
そんな時、誰かが思い出したように私の事を「結花は、いいなぁ~」なんて言えば、皆は一斉に会社員として働いた事もない事、早くに結婚した事、若いママである事などを羨ましがるようになっていた。
大学を卒業したにもかかわらず、まともな仕事もせずにいた自分と、仕事が大変ながらも責任のある中で自分自身を生きてる皆との差に、常に1人なんだか取り残されているような気がしてた。
しかし、現金なもので、結花は幸せでいいな~なんて、羨ましがられるとそうかもなぁ。なんて思えてくる。
最近では、無い物ねだりの羨ましさを置いて考えてみると、優しい夫と可愛い息子に恵まれて幸せだって、思う事が多くなっていた。
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