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駅から駆けてくる彼女の姿が目に飛び込んできた。
「ごめんなさい」
目の前まで来ると、彼女は泣き出しそうな表情で僕に頭を下げた。
「急にお母さんの具合が悪くなって」
「え? 大丈夫なの?」
「病院に行ったら、ケロッと良くなって。私、何度も電話したの」
「ごめん、今日に限ってスマホを忘れてきた」
「まさかこんな時間まで待っていてくれるなんて」
彼女は涙を隠すように俯いた。
「ままま、待って。泣かないで。僕だって今さっきここに来たばかりなんだから」
僕は慌ててそう言ったけれど、何だかおかしくなってきた。
僕が彼女のことを思ってあくせくしていた頃、彼女もまた僕のことを思って焦っていたんだ。
早く僕のことを話して、彼女を安心させてやりたいと思った。
終わり
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