第1章 白の王

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「知ってる?あの扉の向こうには『白の王』が居るんだって」 子供の頃聞いた話を思い出した。 まさにあれは『白の王』に相応しい。とてもキレイで目が離せなくなる。そして、なんだか懐かしい気分になるの。 「『白の王』に出逢えても、けして話しかけてはいけないよ」 お婆ちゃんが言っていた。 ああ、とてもキレイ。それなのに、どうして? 「あなたはそんなに悲しそうな顔をしているの?」 はっと気付いた時には口から言の葉が出ていた。 こちらを振り返る『白の王』はとてもキレイに笑っていた。 「みいつけた」 『白の王』はひんやりした手で私の頬に触れた。 そして、私はお婆ちゃんの言葉を思い出した。 「『白の王』に出逢えても話しかけてはいけないよ。話しかけたら、溶けて消えてしまうから」 瞬きした私の目にとてもキレイな雪が見えた。
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