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「パパ、さっきないてた」
「なっ、こら真凪!」
「えっ……尚くん、なんで泣いてたの?」
「えっ、と……」
尚くんが上半身を起こして、照れたように頭を掻いている。彼のセットしてないさらさらのシルバーが彼を益々奈緒ちゃんにさせるから、私もついドキドキしてしまう。
「パパ、おんなのこみたい」
「そうだよね、パパ、すごく綺麗だよね、まな」
「もぉ、女の子じゃないって。僕はオトコ」
「で、泣いてたの……どうしたの……?」
私が彼の素顔を覗きこむように見ると、まながいるのに私の頭を後ろから抱えるようにして寄せて、食べるみたいに唇を貪った。
「っん」
「あー、パパとママ ちゅーしてゆ」
「……っ、あ……尚く」
「……僕のやりたかったこと、キミが叶えてくれたから」
「っえ……」
すると、唇を離した彼は私のおでこに自分のおでこをくっつけて、彼の吐息が私の肌にかかるくらい近くで、ふふ、と微笑んだ。
「いつも、ご飯作ってくれてありがとう」
「マァマ、あいがと」
「えっ……尚くん……まな……」
そんなこと、私にとっては、当たり前だった。
偏食過ぎる尚くんのために、献立を考えることも別に何にも苦じゃないし、まなの食べやすいご飯を毎日作るのだって、楽しくて……ふたりの笑顔が見れるなら、何だって出来たから。
だから、そのことにありがとうなんて、もったいないよ。
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