読者アンケートの空白

「あんた、思ってないこというのは止めなさいよね」

「あら、バレちゃいました？　だって大変なんですもん。ちゃんと指摘しても『偉そうにしやがってー』とかネットで公表されるんですよ？　怖くないんですか？」

「そんなことが怖くて、編集者なんてやってられないわよ」

「さっすが先輩、惚れちゃいそうです」

「はいはい」

　いつものように、林檎との会話が弾む。

　ちょうど、わたしたちと同じ『月刊スピカ』の編集者たちは、昼食に出かけたのか、まだ出社していなかったりで不在だった。

『スピカ』は、十年ほど前に創刊された漫画雑誌だ。

　バトル漫画やスポーツ漫画、ミステリーなど幅広いジャンルを扱っているが、ターゲット層は主に１０代から２０代の女性に目を向けている。よって、この部署は若干女性の編集者の割合が多い。

　わたしも創刊当時は、大学から卒業したての新人として仕事をこなしていたが、気が付けば、わたしも『スピカ』と同じように年を重ねてしまった。

　それだけ『スピカ』が読者から愛されて続いている証拠だ。

　人気が出た作品は、従来のアニメ化はもちろんのこと、舞台化やコンサート、実写化などもしている。