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林檎も、元々、この雑誌で連載している作品が好きでこの部署に配属になったという話で、配属以来、わたしが面倒を見ているのだ。
しかし、わたしは自分の作業に集中していて、林檎が出社していたことに気が付いてなかったらしい。きっと、わたしにもちゃんと挨拶をしてくれたのだろうが無視してしまったようだ。
そう考えてしまうと、ちょっとだけ彼女に悪いことをしてしまったと思ってしまう。
まぁ、この子のことだから「また先輩やっちゃってますね~」くらいの受け止め方をしているだろうけど。
「さあ、先輩。仕事の切りがいいのなら、ここからは可愛い後輩にご飯をご馳走する時間ですよ」
「あんたね……、そこは逆に、わたしを労ったりするんじゃないの?」
「だから、ご飯を食べながら先輩の話を聞くんじゃないですか~」
可愛らしい声で答えながら、林檎は椅子に掛けていたコートを手に取った。わたしはそこで、またコートの種類が昨日と変わっていることに気が付いたけれど、指摘をすれば話が長くなりそうなので、知らない振りをした。
配属当初は、気慣れていないリクルートスーツでやって来たのに、今では毎日オシャレに編集部へとやってくる。
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