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混乱している私に幼い私は近づいてきた。
「わたしはもうおもいださなきゃいけない。」
手が届きそうな位置までやってきて止まる。
「かわらないと、かわりたいとおもってる。」
あどけない顔が見上げてくる。
そうだ、私はもう変わりたい、変わる方法がほしい。
一人迷子のままは嫌なんだ。
少女はおもむろに握っていた右手を差し出した。
「これをわたすためにまってた。」
受け取らなければいけないと不思議な使命感が湧いてきて、私は右掌を開いて少女の手の下に出す。
少女はゆっくりと手を開いて握っていたものを落とした。
キラリと光った丸いそれはビー玉のようだと思った瞬間弾け飛び辺りが光に包まれる。
眩しすぎて目を瞑ると、何かが脳裏に浮かんできた。
小学生の私はある夜、物音で目が覚めた。
もちろんそこは祖父の家で、真っ暗な廊下を歩いて一階に降りている。
襖の一つから灯りが漏れ出していて、両親がまだ起きているんだと覗きに行った。
そうだ、私はそれをひどく後悔したんだ。
見たこともない光景だった。
父が怒りに震えて顔を真赤にさせている。
母は涙を流しながら金切り声で怒鳴っている。
祖父は難しい顔をして二人を眺めていた。
三人は私に気づかず、父と母が言い争っていた。
内容は難しくてわからなかったが、何度もこんな喧嘩をしているのがわかった。
仲が良いと思っていた両親がこんな喧嘩を繰り返しているのが衝撃で、何より怖くてどうしたらいいかわからなくて、私は気付かれないように素早く自室に戻り無理矢理眠りについたんだ。
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