夢の中

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父も薫さんもこれについて全く言及せず、一定の距離を保ってくれているようだが、その優しさが逆に重くのしかかる時がある。 そして総一くんはあの通りハツラツとしていて人見知りを全くしない子で、すでに父に懐いていて父も総一くんを可愛がっている。 そんな二人を見ていると私は、私だって小学生の頃は元気で活発だったと、年の離れた弟に嫌な対抗意識を持ってしまっている。 「夏菜子ちゃんどうしたの?気分悪い?」 暗い顔をしてしまっていたのだろうか、薫さんが心配そうに覗き込んでくる。 「気分が悪いならもう少し休んでいたほうが…。」 「大丈夫です、なんでも、ないですから…。」 無理矢理取り繕ったが薫さんの優しさが逆に息苦しくてそっと洗面所に向かった。 薫さんの優しさは本心からのようで、義理の娘に無理矢理気を使ってるわけではないんだろう。 そんな薫さんを見る度に、私のお母さんはもっと優しかったと変な比べ方をしてしまう。 薫さんに対しても総一くんに対しても昏い感情を持ってしまって、どんどん自分が嫌になっていくのを感じる。 そして二人と父は仲良く馴染んでいってるのに、私だけが遠くにいるようで孤独感に苛まれていく。 祖父の家に来ても結局は同じだと重い溜息をつきながら洗面所に入る。 古い蛇口をひねるとキュッと耳障りな音を立てながら水を吐き出した。
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