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昼食まで部屋に篭っていても気が晴れないだろうと思って一階に降りてきた。
庭の見える部屋に入ると、父がと祖父が座ってお茶を飲んでいた。
「おじいちゃん、お父さん、おはよう。」
「おはよう夏菜子。」
「もう日も高いぞ。」
そう言って父がからかってくる。
そして二人と一緒に腰を下ろして庭を眺めた。
手入れされた木や季節の花が咲いていて小さいが池もある。
そこに小鳥がやってきて可愛らしい声で鳴いていた。
こうやって三人で過ごしていると小学生の頃、まだ母がいるときに戻ったようだと穏やかな気持を享受していたが、その平穏はすぐに破られてしまった。
「三人とも何してるのー?」
総一くんが片手に大きめの本、おそらくドリルだろう、それを持って薫さんとやってきた。
薫さんはおじいちゃんに会釈をしている。
「あぁ総一か、みんなで庭を見てたんだ。」
「庭?何かいるの?」
「うーん、特に何かいるわけじゃないが綺麗だなと思ってな。」
父の言葉が腑に落ちないのか総一くんはふーんと言って、次の瞬間ぱっと顔を上げた。
「ねぇねぇ!これ見て!難しい問題解けたんだよ!」
「おぉすごいな!」
そう言って嬉しそうにドリルを二人に見せている。
最初はただ元気なのが取り柄の子だと思っていたが頭も良かった。
本人が勉強好きなのか塾にも通っていて、自ら中学受験をしたいと言っているようだ。
こうやって見せに来ることはあっても、自慢げにひけらかすことはしない良い子でもある。
だからこそ私は…。
「お父さん、おじいちゃん、お外で遊びたい!」
「そうか、じゃあ行くか。薫と夏菜子はどうする?」
「私はお買い物があるから、総一のこと任せるわ。」
そうか、と父は言って私に向き直る。
こんな気持で二人と一緒になんていたくない。
「私は、いいや…二人で行ってきて。」
「わかった、総一行くぞ。」
「うん!」
そう言って嬉しそうに二人は行ってしまい、薫さんも先程言っていたように買い物に出かけた。
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