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「あ……、はい!」
彼女は慌てた様子で勢いよく立ち上がり、足早に給湯室に向かった。
「あ、俺も欲しかった」と風間が呟く。
「頼んで来るよ」
俺は彼女の後を追った。
「風間の分もいいかな」
彼女の驚きように、驚いた。
持っていたカップをシンクに落とし、慌てて拾い上げる。
「わかりました」と呟いた声は、震えていた。
「どうしたんですか?」
「え?」
「体調でも悪い?」
「あ……、いえ……」
頬を引き攣らせて、無理に微笑む。
「大丈夫です……」
「全然、大丈夫そうじゃない」
「そんな……こと……」
誤魔化すように俺に背を向け、彼女は落としたカップを洗う。
丸く柔らかそうな背中が、俺を拒絶する。それが、なぜか無性に寂しく感じた。
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