6 二人の距離

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「もしもし?」 『お母さん?』  一日振りに聞く、真の声。その向こうに、亮の声も聞こえる。従兄妹たちと楽しそうな声。 「真? どうしたの?」 『お母さん、こっちに来る?』 「え?」 『おばあちゃんが温泉に泊まりに行こうって言うんだけど、近くに駅がないからお母さんはどうする? って……』 「温泉? どこの?」 『おばーちゃーん。どこの温泉ー?』 『真、ちょっと代わって』 『俺もお母さんと喋るー!』 『亮、後で代わってあげるから』  亮が口を尖らせる姿が想像できる。 『もしもし? お姉ちゃん?』 「ごめんね、子供たち任せっ放しで」 『ううん。それより、来れそう? 瑛太(えいた)の友達家族が行くはずだった温泉に行けなくなっちゃって、予約を譲ってくれたから行こうって話になったんだけど、駅から遠いんだよね。だから、お姉ちゃんが来れそうなら迎えに行くから』 「タクシーで行くからいいよ」 『一時間近くかかるから、結構な金額になるよ?』  そんなに遠いなら、迎えに来てもらうのも申し訳ない。  迎えに来るとしたら、土地勘のある妹か妹の夫の瑛太くん。子供たちがいるから、きっと瑛太くん。 『お姉ちゃん、お母さんから聞いたけど――』  一瞬、喧騒が聞こえなくなった。
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