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『付き合ってる人がいるんだって?』と、妹の囁き声。
『今もその人と一緒?』
「ちがっ――!」
『子供たちのことは心配しなくていいから、羽伸ばしなよ』
「璃子!」
思わず声が大きくなってしまい、ハッとする。
「そういうんじゃないから」
『隠すことないじゃん。再婚とか抜きにしても、恋人くらいいたっていいと思うよ? せっかく自由になったんだから!』
部屋を移ったらしく、璃子の背後が静かになり、璃子の声のボリュームも戻った。
『今度、どんな人か聞かせてよ』
「璃子。子供たちには――」
『言わないよ。真が聞いたら、一人でも電車に飛び乗りそうだからね』と、妹がケラケラと笑う。
「笑いごとじゃないから」
『ま、恋人のことは置いといても、今回はゆっくりしなよ』
「ん。ありがとう」
『亮に代わるから、切ってね。亮ー! お母さんと話しなー』
バタバタと走る足音。
『お母さん!』
元気な声は、少し息が弾んでいた。
亮の姿を思い出すと、ホッとする。
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