6 二人の距離

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「亮? いい子にしてる?」 『うん! みんなで温泉に行くさ!!』 「お風呂で走っちゃダメよ?」 『うん!』 「お兄ちゃんと喧嘩しないでね?」 『うん! お母さん、お土産は何がいい?』 「いらないよ」 『ダメ! 兄ちゃんと俺のお小遣いで買うんだから』 「お小遣い? 家から持って行ったの?」 『うん!』 『亮! 言ったらダメだろ』と、真の声。 『あ! 俺、まだ話してるのに!』 『うるさい!』  いつもの兄弟の会話。  真が亮から電話を奪う姿が目に浮かぶ。 「真! 勝手にお小遣いを持って行ったの?」 『おばあちゃんがいいって言ったから』 「全部持って行ったわけじゃないでしょうね」 『……』 「落としたらどうするの! 千円ずつ持って、あとはおばあちゃんに預けなさい」 『千円じゃお母さんにお土産買えないしょ』 「二人で五百円ずつ出して、千円以内で買える温泉饅頭かクッキーを買って来て? 残りの五百円で、自分の好きな物を買っておいで」 『わかった』 「亮と喧嘩しないでね?」 『うん!』 「気を付けてね?」 『うん! お母さん、バイバイ』 「バイバイ」  スマホをバッグにしまい、正面を向く。
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