6765人が本棚に入れています
本棚に追加
/444ページ
工場からの帰りにラーメンを食べた。智也は味噌、私は醤油。
二人ともお腹が空いていたし、工場の人が美味しいと勧めてくれたから。
美味しかった。
「さて。この後はどうする?」
会社に戻って仕事をするのだと思っていた。
「映画でも観に行くか」
二人で映画を観るなんて、デートみたいだと思った。
「デートの定番っぽいだろ?」
考えが似ているのか、智也は時々、私が思ったことを口にする。
それが、嬉しい。
「最近、全然行ってないから、映画館の場所も忘れたな」
「ここからなら、小樽が近いですよ」
「ああ!」
智也が右に車線変更し、ウインカーを上げた。タイミングよく信号が変わる。右折するとすぐに、右前方に海が見えてきた。
「よく行くのか?」
「はい。子供を連れて、ですけど」
「小樽に?」
「小樽は空いてるから、多いですね。時間が合わない時は札駅ですけど」
「子供はどんな映画見るんだ?」
「アニメですよ。最近は――」と言いかけて、ようやく気がついた。
「誰かに見られたりしませんか?」
最初のコメントを投稿しよう!