6 二人の距離

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「誰が困るんだよ」  智也が苛立っているのがわかる。 『何に』苛立っているのかわからないけれど。 「お互いに困るでしょう? 年上のバツイチ子持ちと噂になるのも、子供がいるのに年下上司と噂になるのも」 「俺は困らない」  智也が右にウインカーを上げた。信号に右矢印が表示され、右折する。  映画館に行くなら、直進。  機嫌を損ねて、帰るつもりなのだと思った。  だから、それ以上は口を開かなかった。  けれど、右折してからしばらく直進し、マンションへの道から遠のいていく。 「課長? どこに行くんですか?」 「人に見られなきゃいいんだろ」 「え?」  まさか、と思った時には駐車場の入り口を通過していた。 「課長!」 「なに」 「なにって――」  ラブホテル。  海沿いに建つ、近辺では有名なホテル。  智也は空いているスペースに車を停め、無言で降りた。  なんで、急に、こんな――。    降りるに降りられずにいると、助手席のドアが開いた。 「降りろ」 「課長、どうして――」 「見られたくないんだろう?」 「それは――」
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