6 二人の距離

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「いい年して、ラブホテル(こんなところ)で言い争ってたら、恥ずかしいぞ」 『恥ずかしい女だな』  忘れたい声が、言葉が、脳内で響く。  怖い。  有無を言わさぬ口調。  見下すような視線。  智也は元夫(あの人)とは違うのに、逆らえない。  私はシートベルトを外し、車から降りた。黙って智也の後に続く。  エレベーターでフロントに上がり、タッチパネルで部屋を選ぶ。再びエレベーターで選んだ部屋に上がる。  その間中、私は俯いていた。  智也がどんな部屋を選んだのかも、何階の部屋を選んだのかも、わからない。  ただ、黙ってついて行くだけ。  二年前までの地獄の再現のよう。 「ごめんなさい……」  部屋に入るなり、思わず口をついた。  条件反射。 『謝るしか出来ないとか、馬鹿なのか?』  それでも、私には謝るしか出来ない。 「ごめんなさい…………」 「なにが?」 「口答えを……して……」 「彩、顔を上げろ」  そう言われて、私はゆっくりと顔を上げた。目の前の窓の向こうには、一面の海。  波が打ちつけられる音が聞こえる。 「ラブホにしてはすげーな」
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