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「どうぞ」と、堀藤さんが俺の言葉を遮って、課長にカップを差し出した。
「ああ」と言って、課長がカップを受け取る。
そのままカップを口に運び、眉をひそめた。
「あっま!」
溝口課長はブラック派。それは、彼女も知っているはずだ。
「なんだ、これ!」
「イライラ……する時は、糖分を摂ると落ち着くそうです」
「勝手な事されたら、余計に苛つくわ」
怒りの矛先が、彼女に向く。
「あんたも俺を怒らせたいのか!」
彼女が、課長に怯えているのは隠せていない。課長もわかっていて、凄んでいる。
いじめであり、パワハラ。
「あんな……風に怒鳴るのは……良くないと思います」と、彼女が声を絞り出す。
堀藤さんと働いて一年弱だけれど、口答えや意見をするのは初めてだと思う。
「怒鳴られたくなきゃ、怒鳴られないような仕事をすりゃいい」
「誰も……怒鳴られたくてそうしてるわけじゃないと……思います」
「はあ?」と、課長が馬鹿にしたように聞き返す。
「一生懸命……やっても……ミスしてしまうことも……あると思います」
彼女の言葉に、溝口課長の表情が消えた。
「仕事は結果なんだよ。一生懸命やったからって許されるもんじゃない」
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