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それを聞いた課長はニッと口角を上げ、カップをシンクに置いた。
「ブラックで淹れ直してくれ」
「は……い」
「それから、明日は暇か?」
はぁ? と言いかけて、なんとか呑み込んだ。
「休日出勤、出来るか?」
「溝口課長、堀藤さんは平日勤務のパートさんで、お子さんも――」
「近藤がミスした見積書は、月曜の朝までに先方にメールしなきゃならない。あの様子だと、誰も俺と休日出勤はしたくないだろう?」
俺の言葉を最後まで聞かず、課長が言った。
「あんたはタイプも早いし、正確だ。そして、俺を怖がっていない」
『子供がいるので休日出勤は出来ません』と言って欲しかった。けれど、またもその願いは一蹴された。
「十時から三時までで良ければ、出来ます」
出来ちゃうのかよ……。
俺は心の中で肩を落とした。
「じゃあ、頼むわ」
溝口課長はそう言って、給湯室を出て行った。
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