2 二歳年下の上司

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2 二歳年下の上司

 震えた声が、やけに色っぽかった。  本当は俺が怖いくせに、怖くないと言った時の目が美しかった。  すぐに泣く女は嫌いだ。大っ嫌いだ。  だから、これまで付き合ってきた女はみんな、自立した気の強い女。男に依存しない、女。  けれど、どの女とも長く続いたことがない。  依存しないイコール必要じゃない、から。  最初のうちは大人の関係だと思える。けれど、三か月もするといてもいなくても良くなる。そのうち、セックスの為だけに連絡を取って仕事を調整するのが面倒になる。  そして、気がつく。  ああ、俺にはこいつは必要ない。  俺がそう思う時、大抵は相手も同じことを思っている。  だから、電話一本、メール一通で別れられる。円満に。  そんなことをしているうちに、三十六歳になった。来月には三十七歳になる。  自分が優秀だと自覚はある。けれど、他人にも容赦ない性格のせいで、出世が遅い。それも、自分のせいだとわかっているから、仕方がない。  とはいえ、ここ数年は友人や後輩の結婚と出産が続き、この一年程は女とも縁がなかった俺は、少し考えが変わりつつあった。  俺の人生、何が楽しい――?
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