2 二歳年下の上司

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 家庭を持った友人は飲んでも愚痴ばかりで、二言目には『独身のお前が羨ましい』と言う。  温かい食事が用意された明るい家に帰ったことのない俺には、彼らの気持ちが理解できない。  職場では恐れられるばかりで、女性社員はもちろん、男性社員も俺と仕事をするのを嫌がっている。  時々、思う。  どんなに仕事を頑張っても、俺の行きつく先は孤独死か……。  三歳年下の後輩は、俺より若くして同じ課長職に就いた。俺ほど仕事ができるとは思えないが、容量がよくて人当たりがいい。女性社員にも人気がある。  そいつがパートのおばさんと話しているのを、偶然聞いた。 『面白かったです、教えてくれた映画』  ピンときた。  年上好きか?  勘は当たっていた。  俺に怯える彼女の前で、千堂(あいつ)は初めて俺に意見した。  ヒーロー気取りかよ。  面白くなかった。  ミスしたくせに怒られて泣く近藤も、若い女にモテるくせに年上のパートにいいところを見せようと噛みついてくる千堂も、俺が怖いくせに甘ったるいコーヒーを飲ませた堀藤も。
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