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自宅のプリンターの調子が悪くなって、新しいものを買おうと外出した。
電機店でプリンターを見て、ネットショップと価格を比較し、結局店では買わなかった。荷物もないことだしと、久し振りに映画館に入ったのは、本当に気紛れだった。
そこで、彼女と会った――――。
彼女の笑顔を始めて見た時、全身に電流が巡った。
陳腐な表現だけれど、事実だ。
「堀藤さん?」
思わず、声をかけた。
彼女は俺を見上げ、慌てて立ち上がった。深々とお辞儀をする。
「こんにちは、千堂課長」
いつも無造作に束ねている髪が肩から落ちた。少しうねった毛先が、揺れる。
その髪に触れたい、と思った。
「お母さんの友達?」
彼女の両脇にいる男の子の一人が聞いた。弟君は彼女の胸くらいまでの背丈で、恐らく小学二・三年生だろう。
「会社でお世話になっている人だよ」と、彼女が少し膝を曲げて、弟君に言った。
「こんにちは!」
小学五・六年生のお兄ちゃんが言った。
「こんにちは」と、俺も挨拶する。
「こんにちは!」
弟君も言った。
「こんにちは。元気だね」と、俺は弟君に言った。
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