1 五歳年下の上司

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 自宅のプリンターの調子が悪くなって、新しいものを買おうと外出した。  電機店でプリンターを見て、ネットショップと価格を比較し、結局店では買わなかった。荷物もないことだしと、久し振りに映画館に入ったのは、本当に気紛れだった。  そこで、彼女と会った――――。  彼女の笑顔を始めて見た時、全身に電流が巡った。  陳腐な表現だけれど、事実だ。 「堀藤(ほりふじ)さん?」  思わず、声をかけた。  彼女は俺を見上げ、慌てて立ち上がった。深々とお辞儀をする。 「こんにちは、千堂(せんどう)課長」  いつも無造作に束ねている髪が肩から落ちた。少しうねった毛先が、揺れる。  その髪に触れたい、と思った。 「お母さんの友達?」  彼女の両脇にいる男の子の一人が聞いた。弟君は彼女の胸くらいまでの背丈で、恐らく小学二・三年生だろう。 「会社でお世話になっている人だよ」と、彼女が少し膝を曲げて、弟君に言った。 「こんにちは!」  小学五・六年生のお兄ちゃんが言った。 「こんにちは」と、俺も挨拶する。 「こんにちは!」  弟君も言った。 「こんにちは。元気だね」と、俺は弟君に言った。
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