2 二歳年下の上司

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 彼女は十時十分前に来た。  いつもは紺の制服姿だが、休日は私服。  最近よく見かける襟の開いた薄いピンクのさらさらのブラウスに、黒のスカートみたいなパンツ、少し高めのヒールの短めのブーツ。  いつもの眼鏡はしていないし、いつもはファンデーションくらいしかしていない化粧も、今日は目元も色づいている。いつもは無造作に後ろで束ねている髪も、半分をクリップで止め、半分は下りている。毛先がくるっと丸まって揺れている。  印象ががらりと変わった。  とても美人だとかスタイルがいいとか、そういうのとは少し違う。  年相応の落ち着いた雰囲気。 「おはようございます」  彼女はデスクにコートとバッグを置き、パソコンの電源を入れた。  大きなバッグだな、と思った。  彼女が俺のデスクの前に立つ。 「見積書、ですよね」 「ああ。これ」と言って、俺は彼女に手書きの受注書を手渡した。  昨日と同じ、微かに甘い香りがした。 「価格表はあるか?」 「はい」 「じゃ、頼む」 「はい」  彼女が振り返ると、また香りがした。
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