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「何年生?」
「二年生! 兄ちゃんは五年生!」
弟君は弾む口調で言った。
「そっか」
子供と接したことがない俺は、その先の会話に困った。
「何、観るの?」
「コ〇ン!」
弟君が抱えているポップコーンに目がいった。コ〇ンの容器。
「もうすぐ始まるから、トイレに行っておいで」と言って、彼女がポップコーンを受け取った。
二人はトイレに向かって走り出し、彼女は心配そうに口を開いたが、言葉は発しなかった。
「元気なお子さんですね」
俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。
「やんちゃで……」
会社では見せたことのない笑顔。
とても、幸せそう。
「課長もこれから映画を観るんですか?」
「え……? ああ。どうしようか迷ってたとこです。せっかく出てきたから、面白そうなのがあればと思って」
「そうですか」と言った彼女と、視線がずれた。
俺の肩越しに何かを探しているよう。
「あ、じゃあ、これで失礼します」
もう一度お辞儀をして、彼女が言った。
立ち去ろうとする彼女を引き留めたくて、一瞬でそうするための言葉を考えた。
「映画! 面白そうなの、わかりますか?」
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