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「え?」
「最近、そういうのに疎くて。お勧めとか、ないですか?」
「課長と彼女さんの好みがわからないので……」と、彼女が申し訳なさそうに言う。
「え?」
デートだと思われてる?
「あ、俺、一人ですよ?」
「え?」と、今度は彼女が聞き返す。
「俺、今、彼女はいないから」
「あ! ごめんなさい。てっきり……」
「いいですよ」
再び、彼女が俺から視線を外す。彼女の視線の先には、トイレから出てきた兄弟がいた。
「お母さん、ハンカチちょーだい」
兄弟の手は濡れていた。
「風が出るやつ、並んでたから」
彼女はバッグのファスナーを開けようとするも、ポップコーンが邪魔をしていた。俺は彼女の手からポップコーンを預かった。
「すみません」と言いながら、手早くハンカチを取り出し、まず弟君の手を拭いた。
次に、お兄ちゃんにハンカチを渡す。
弟君は早くポップコーンが食べたいらしく、俺に手を伸ばした。ポップコーンを差し出すと、嬉しそうに両手で抱えた。
「何味?」
弟君と目線を合わせようとしゃがむと、彼を見上げる格好になってしまった。
「バター醤油!」
「好きなの?」
「うん! キャラメルのも食べたいけど、ダメだって!」
「どうして?」
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