1 五歳年下の上司

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「え?」 「最近、そういうのに疎くて。お勧めとか、ないですか?」 「課長と彼女さんの好みがわからないので……」と、彼女が申し訳なさそうに言う。 「え?」  デートだと思われてる? 「あ、俺、一人ですよ?」 「え?」と、今度は彼女が聞き返す。 「俺、今、彼女はいないから」 「あ! ごめんなさい。てっきり……」 「いいですよ」  再び、彼女が俺から視線を外す。彼女の視線の先には、トイレから出てきた兄弟がいた。 「お母さん、ハンカチちょーだい」  兄弟の手は濡れていた。 「風が出るやつ、並んでたから」  彼女はバッグのファスナーを開けようとするも、ポップコーンが邪魔をしていた。俺は彼女の手からポップコーンを預かった。 「すみません」と言いながら、手早くハンカチを取り出し、まず弟君の手を拭いた。  次に、お兄ちゃんにハンカチを渡す。  弟君は早くポップコーンが食べたいらしく、俺に手を伸ばした。ポップコーンを差し出すと、嬉しそうに両手で抱えた。 「何味?」  弟君と目線を合わせようとしゃがむと、彼を見上げる格好になってしまった。 「バター醤油!」 「好きなの?」 「うん! キャラメルのも食べたいけど、ダメだって!」 「どうして?」
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