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翌朝。
智也より先に目が覚めて良かった。
こっそりとベッドを出て、身支度をし、フライパンを火にかけたところで智也が起きてきた。
「おはよう」
「おはようござ――」
「敬語、ヤメロ」
「はーい」
なんだか、気持ちが弾んでいた。
朝食を済ませて洗い物をしているうちに、『智也』は『課長』に姿を変えていた。
見慣れた眼鏡姿に違和感を覚える。
「で? あんたが出社する理由は?」と、マンションを出てすぐに、智也が聞いた。
今日は車で出勤。
「ちょっと……確かめたいことがあって」
「確かめたいこと?」
「もしかしたら、昨日の平野さんの件を解決できるかもしれません」
「どういうことだ?」
本当は、社で進行中の契約と納品書を確認してから言うつもりだった。けれど、十中八九、私の記憶は正しいはず。
「平野さんが発注ミスしたポーチ、三課でも受注がありましたよね?」
「え?」
「確認したわけではないんですけど……」
智也が横目で私を見た。
「どうして三課が?」
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