6 二人の距離

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 翌朝。  智也より先に目が覚めて良かった。  こっそりとベッドを出て、身支度をし、フライパンを火にかけたところで智也が起きてきた。 「おはよう」 「おはようござ――」 「敬語、ヤメロ」 「はーい」  なんだか、気持ちが弾んでいた。  朝食を済ませて洗い物をしているうちに、『智也』は『課長』に姿を変えていた。  見慣れた眼鏡姿に違和感を覚える。 「で? あんたが出社する理由は?」と、マンションを出てすぐに、智也が聞いた。  今日は車で出勤。 「ちょっと……確かめたいことがあって」 「確かめたいこと?」 「もしかしたら、昨日の平野さんの件を解決できるかもしれません」 「どういうことだ?」  本当は、社で進行中の契約と納品書を確認してから言うつもりだった。けれど、十中八九、私の記憶は正しいはず。 「平野さんが発注ミスしたポーチ、三課でも受注がありましたよね?」 「え?」 「確認したわけではないんですけど……」  智也が横目で私を見た。 「どうして三課が?」
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