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二時間後。
私と智也は車に段ボールをぎゅうぎゅうに詰め込んで、会社から車で四十分ほどの場所にある、工場に向かっていた。
三課は平野さんが発注ミスしたポーチを五百個、倉庫に保管していた。
納品日は未定。
智也は倉田課長に電話し、在庫を貸してほしいと頼んだ。
倉田課長は了承した。
倉田課長は昨日の午後は外回りに出ていて、平野さんの発注ミスを知らなかった。
工場が稼働していることを確認して、ポーチを運ぶことにした。ロゴを入れてもらうために。
「彩のお陰で助かったよ。ありがとう」
「お役に立てて良かったです」
「飯、何食べたい?」
「気にしないでください」
「気にするだろ。昼だし」
カーナビの左上の時計は十二時十五分を表示している。
「荷物を降ろしたら、飯にしよう。あの辺りに美味い店、あったかな」
「課長、私――」
言いかけた時、バッグの中でスマホが震えた。
母からの着信。
「ちょっと、すみません」と言って、私はスマホを耳に当てた。
座り直して、ドア寄りに身体を向ける。
智也が、音楽のボリュームを下げてくれた。
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