3 食後の緊急事態

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 コチッと、壊れたスイッチのような音が頭に響いた。押しても押しても何の反応も得られないような、軽い感触。  手応えが欲しい。 「プライベート(こんなところ)で『課長』はやめてくれない?」 「え?」 「美味い酒も不味くなる」 「はぁ……」  ウエイターがビールとワインを運んできた。 「あんた、酒強いの?」と、俺はグラス半分を喉に流し込んでから聞いた。 「強くないです」 「酔うとどうなんの?」 「ずっと笑ってます」 「へぇ。いいな、楽しい酒で」 「かちょ――溝口さんはお酒強そうですよね」と、彼女が皿に残っていたピザを銜えながら言った。 「弱くはないな」 「私、デザート取って来ますけど、食べます?」と言いながら、立ち上がる。 「苦めのチョコレートケーキかチーズケーキがあれば、頼む」 「わかりました」  彼女はデザートが置かれたテーブルの端から端をじっくり見て、皿を持った。二口もあれば食べられそうな大きさのケーキを、一つずつ皿に乗せていく。  全部取るつもりか?  十種類はあるケーキは、窮屈そうに皿に並べられた。それを俺の前に置く。小さい取り皿と一緒に。 「好きなのをどうぞ」と言って、彼女はまたデザートの一角に戻って行った。  そして、フルーツと団子のような和菓子が乗った皿を持って、戻ってきた。
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