111人が本棚に入れています
本棚に追加
「ミネ! ミネちゃーん! ネクタイってこうだっけ?」
「違いますよ。長い方をグルッと……って、前も教えたでしょ?」
「こう? こう?」
「はいはい……」
仙波さんのネクタイを締めて、後ろへ下がる。
「うん。カッコイイよ。決まってる」
「ありがとー!」
「ちゃんと仲直りするんですよ?」
「うんうん。いってきまーす」
「いってらしゃい」
ニカッと仙波スマイルで楽屋を出て行く人。ドアがパタンと閉まり、フリフリしてた手を下ろした。
「ふーっ」
ゴウさんは今日、仙波さんより先に楽屋から出て行った。大事な用があるって言ってた。クリスマスだし……きっとパーティとか? もしかしてデートなのかもしれない。
結局、僕はひとりだ。
「ふふ」
自虐気味に笑ってみる。
滑稽だね。でもこれでいいんだよ。マネージャーが恋心なんて抱いちゃいけない。タレントさんは大事な商品。それ以上でも以下でもない。ちゃんとわきまえないと。
背中のバッグを前に回して車の鍵を取り出してると、カチャとドアが開いた。仙波さんが忘れ物でもして戻ってきたのかと思った。でも振り向くとゴウさんで……、僕は呆気に取られた。
最初のコメントを投稿しよう!