それでも私は......

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○  ○  ○ 壁に向かい、ひたすら座る。 宗派により作法は違うが、曹洞宗ではこのように座禅をする。じつに落ち着く。参加者数人の息づかいと、境内で鳴く鳥の声だけが聞こえる。静かな座禅堂内を満たす雑音ではない音たちが心地よい。 うむ。あんまんのことなどどうでもよくなってきたぞ。 あいつは何だかんだで結局、私があんまんを買って帰ると思っているに違いない。なあにがダーリンよろしくだ。そもそも子供らが巣立ってからのそのゴロゴロっぷりはなんだ。お前はすでに老後かあぁっ。 ヒタリ。 心で吠えまくる私の右肩に平たくひんやりとした木の感触が伝わる。しまった。一喝のため警策(きょうさく)が入りますよの合図である。座禅というと、おそらくだれもがイメージするだろう肩をたたくあれだ。ついつい興奮して姿勢が崩れてしまっていたようだ。 合掌し、頭と体を左に傾ける。 タシ----ンンっ!! 小気味よい音が静寂を破った。
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