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セシリアからの手紙(アルブレヒト)
大分遅くなってしまったけれど、今度こそナルサッハを救ってやれただろうか。別れ際の彼の顔は穏やかで、昔に戻ったような気がした。
だがここで救われたのは、アルブレヒトもだったに違いない。ずっと引っかかっていた彼との事が整理できた事。そして、自分の心とも向き合い、伝える事が出来た気がした。
人の感情を強く感じた事は宝だ。これまでユーミルの時代にも、こんなに特別な相手はいなかった。いや、広く平等な慈悲から抜けられなかっただけなのかもしれない。個人に向けるこんなに強い執着なんて持ち得なかった。
でも今は素直に感じられる。彼は特別だった。今も特別だ。遺体を手放せず側に置いた事も、救った今もどこか寂しいのも、特別故だ。例え救ったとしても、彼は既に死んでいる。長く側にあれるわけではない。でも、いて欲しいと願ってしまう。自分勝手だが、これが今の感情だ。
恋情だったのだろうか。胸にぽっかりと開いた悲しさと寂しさへの答えは、まだ出てはいなかった。
何にしても一つ気持ちが進んだ事は確かだ。その効果か、帝国側との話し合いはしっかりと進むようになった。
「良かった、兄の気持ちが少しでも前を向いたようじゃ」
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