セシリアからの手紙(アルブレヒト)

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 キルヒアイスの個人資産は抑えた。他国から奪い取った財貨や、気に入らない商人を潰して得た資産、ご機嫌取りに献上された品々など、かなりため込んでいた。  だがそれも戦後復興と賠償としてほぼ出してしまう事になる。取り急ぎは荒れたラン・カレイユの国土を復興させる事だろうか。  それもあり、最初のカールとの話し合いで土地の引き渡しは出来ても金銭の賠償は難しい事を伝えて、書面にしておいた。そして彼はその約束を違えなかったのだ。「払えるだけでいい」という言葉が、労いの手紙と共に贈られた時にはほっとしたものだ。 「帝国側のラン・カレイユの土地、三分の一。処刑後のラジェーナ砦の解体と、その跡地を帝国側でもらい受ける。これで、後はそちらの言い値で賠償は良いとの事じゃ。幸い戦いは帝国領内にはほぼ持ち込まれなんだしな」 「すみません、シウス」 「なに、気に病むな。むしろこれからは国交のなかったジェームダルと正式な契約を結べるとあって、商人がお祭り騒ぎじゃ。染料に良質の宝石、スパイスなども帝国にはない高価な物がある。兄、しっかり税の話をせねばむしり取られるぞ」 「ふふっ、そうですね。でもそれはこちらも同じ事。帝国の学問や文化、芸術、ワインや織物も魅力です。農地開拓の技術や治水に関しても学ばねばならない事は多いでしょうから」     
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