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「一時的な財貨ではなく、長く続く経済を。これこそ、価値のあるもの故な」
ニヤリと笑うシウスに対し、アルブレヒトも同じように笑った。
「さて、こちらも概ねは予定通り。問題は、人じゃ」
重苦しい顔をしたシウスがドッカリと背もたれに背を預けて腕を組む。思い悩むような様子に、アルブレヒトも僅かに俯いた。
一部の人は、心にあまりに大きな傷を負った。そして、戦争が終わったからこそ不安げにしている者もいる。
ベリアンスは、気力を取りもどしたようだ。ダンが上手く事をおさめてくれた。あの二人は友情という絆がある。だからこそ、ダンならば今のベリアンスを立ち上がらせてくれるのではないかと思っていた。
だがレーティスは、未だに心を沈ませている。
チェルルはハムレットの側にいたいというが、帝国領内でのテロ活動という過去は消えない。帝国からの強制退去。これを覆すにはどうしたらいいか、考えあぐねている。戦争が終わり、それでもあの二人の絆は切れないどころかより増している。離れても、幸せであってもらいたい。
「兄、ベリアンスに関しては帝国で引き受けようか?」
「え?」
しばし考えていたシウスから、突然の申し出があった。それに目を丸くしたアルブレヒトに、シウスは尚も続けた。
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