381人が本棚に入れています
本棚に追加
「それぞれの軍の者を交換する事は考えておった。ジェームダル側としては『人質』という事にはなるが、そのような扱いはしないと約束する。この土地には思うところが多すぎるであろ? それならしばし、帝国で預かろうか?」
「そんな所まで迷惑をかけられませんよ」
「なに、どちらにしても誰かがと思っていた事ぞ。ベリアンスならば地位的にも申し分ない。そのかわり、こちら側の『監視』として、オーギュストを残したい」
この申し出には、流石に甘え過ぎているようでいたたまれない。
確かにベリアンスにとってジェームダルは様々な事がありすぎた場所だ。知り合いも多く、しがらみも多い。帝国が引き受けて新天地でしばらくの間暮らすのも悪くはないとは思う。
だがそれと交換でオーギュストが来るのは、甘えている。レーティスを立ち上がらせるのに彼は必要な人物だが、それでもオーギュストの意志があるだろう。
「オーギュストは、なんと?」
「残って、レーティスの側にいたいそうだ。少なくとも今、彼を手放す事はできないと申し出があった。奴も昔はテロリスト、現在は強制労働として罪を償っている最中ではあるが、あの人格は信じておる。帝国への謀反などは考えられぬ故、籍を帝国騎士団に置いておれば目を離してもよいと考えている」
思いがけない申し出は、有り難い。だが、甘えてよいものだろうか。
考えていると、シウスは苦笑して頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!