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本当に言いたいのは、もっと違う事だ。「有り難う」と言いたいはずなのに、口に出るのはマイナスの言葉。「放っておいて」「楽にして」「もう嫌だ」と、心がギスギスしたまま口に出てしまう。
「お人好しか。そうかもしれないな」
「否定しないのですね。こんな……面倒臭いでしょ」
俯いて、呟いた言葉に後悔する。もしも「面倒だ」と返ってきたらどうするんだ。そんな事を言われたら、今は耐えられない。
ギシリとベッドが軋む。次には頭を引き寄せられて、大きな胸に額を押し当てた。
「性分だ」
性分……。それで、片付けられるのか。
どんな言葉を欲していたのだろう。拒絶の言葉ではないものの、レーティスの心はひび割れたままだった。
少しして、アルブレヒトがレーティスの元を訪れた。この人にも、申し訳がない。もっとしっかりしなければいけないのだろうに、大変な時なのに、立ち上がる気力も沸いてこないだなんて。
「レーティス、今少しだけいいですか?」
「はい……」
叱責だろうか。だが、表情からそれは違うと読み取れる。手を握る温かな体温が、身に染みていく。
「痩せましたね。やつれたと言いましょうか」
「……申し訳ありません」
「いいのです、当然です。大切な人を亡くしたばかりですから」
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