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大切な人。それは、間違いがない。救ってあげたかったし、側にいてあげたかった。でも結局何も出来なかった。ベリアンスを、レーティスを解放するために、彼女は自らの命を捨てたのだ。
アルブレヒトが苦笑して、存在を示すように手を握る。ここにいると主張されて、力のない視線が彼を見た。
「レーティス、オーギュストとは上手くやっていけそうですか?」
「え?」
思わぬ名に、疑問が浮かぶ。どうして今、彼の名がでてくるのか。
だがその答えはすぐに放り込まれた。
「オーギュストが、貴方の側にいることを望んでいます。貴方にも、それを確認したいのですが」
「側に、とは? だって、彼は……」
「私の後ろに帝国が付いた形ではありますが、我が国は敗戦国でもある。勝った国の監視下に置かれる事はごく自然な流れ。彼は監視人の一人としてこの国に残り、貴方の側にいることを願っています」
そんな義理、彼にあるはずもない。義務もない。なのに、どうしてそんなに側にいようとしてくれる。こんな面倒臭い奴の側に、どうして。
痛む胸を握った。「性分」という言葉が突き刺さっているようだ。
「いりません、そんな……」
「ですがレーティス、今の貴方には誰かが必要です。貴方はその相手を彼だと、何処かで思っているのではありませんか?」
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