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「いりません! 私は! ……私など、どうなってもいいではありませんか。こんな面倒な奴、さっさと何処かで野垂れ死ねば良かったのです。助けてなんていらなかった。なのに……どうして皆私に生きろと言うのです」
手を握り絞めて、絞り出した言葉と一緒に涙もこぼれていく。家族のように、妹のように、恋人のように大切にしていたはずだった。望まぬ男の子供を身籠もったと聞いてもまだ、裏切られたとか、憎いとか思わなかった。ただ、憐れんだ。
一度は守れなかったから、次こそは守りたい。時間がかかっても、また笑って欲しい。そう思っていた相手は、もうこの世のどこにもいないのだ。
「死なせてしまった。私達の為に……私が殺して……」
「それは違います、レーティス。彼女は全てを受け入れていました。貴方を案じていました。沢山の苦しみはあっても最後は、穏やかな気持ちで旅立っていったのです。貴方が幸せになる事を願って」
「ではどうして死んでしまったのですか! 彼女が死んで、私が喜ぶとでも……」
言うべきじゃないし、相手が違う。けれど棘だらけの心は言葉と感情を抑えられない。困らせてしまうのに、吐き出そうとしている。
「……申し訳ありません、アルブレヒト様。今は、放っておいてください」
「レーティス」
「お願いします」
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