けじめ(アルブレヒト)

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 翌日、多くの民衆がこの地へとおしかけてきた。砦から兵に捉えられ出されたキルヒアイスは暴れ、暴言を吐き続けている。  その様子を砦のテラスから見ているアルブレヒトは溜息ばかりだ。  見苦しい、としか言いようがない。確かに彼にも同情すべき部分はある。今の彼を作り上げたのは間違いなく旧主流派だ。自分に都合のいい愚王を作り出した彼らに一番の罪があるだろう。  それでも自らを省みて、道を正そうと思う事はできたのだ。それが出来なかったのはキルヒアイスの甘えであり、愚かさであり、横暴だったのだ。  背後にはダンが。隣りにいるカーライルの側にはオスカルがついている。他は下げさせた。  だがこちらへと、カツンカツンと穏やかな足音をさせながら近づいてくる者がある。  思わず振り向き誰かを確認しようとしたが、他の三名はこの音すらも聞こえていないようで首を傾げている。そして砦の暗がりより進み出た者を見たアルブレヒトもまた、この反応に納得した。 『まったく、最後までこの有様とは情けない。これでも一度は王冠を賜った者なのでしょうか』 「ナルサッハ……」     
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