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『我が君アルブレヒト様、沢山のご迷惑をおかけしました。自ら作り上げた虚構の王は、私が責任をもって屠ります。貴方はどうかお気になさらず』
「無茶を言うな」
『優しすぎますよ、まったく。これでは少し心配になります。ですからコレは、私から貴方への置き土産といたします』
そう言って握られた手が、徐々に熱をもっていく。死んだ人間がこれほどまでに焼き付くような熱を持つなんて信じられなくて、それが引いた後もしばし驚いたままナルサッハを見ていた。
『試しにそこの彼に触れてみてください』
「え?」
ふと、傍らに立つダンを見る。驚いたままの彼に触れると、何やら今までとは感覚が違った。
「アルブレヒト様、一体なにが……」
『ナルサッハって……死んだよな? もしやココにいんのか! 勘弁してくれ、俺はそういうの苦手だっての!』
「!!」
耳で聞く声の他に、頭に響く声がある。驚いて手を離すと聞こえなくなった。
ナルサッハはそんなアルブレヒトを見つめ、クスクス面白そうに笑っている。だからこそ、驚きつつも少し睨んだ。つまりこれが、彼の持つエルの能力だったわけだ。
「お前が時に私を見て不安にしたり、楽しげだったりした理由が分かりました」
『怒らないでください、我が君。死んだ者をそう睨むものではありませんよ。水に流してください』
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