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悪びれもせず片眉を上げ、楽しげに笑うナルサッハに溜息が出る。
話してもいない心配事が筒抜けだったり、悪戯がバレていたり。過去そんな事が多かった。洞察力の良さだと思っていたが、なるほど。彼にはアルブレヒトの心の声が触れるだけで筒抜けになっていたのか。バレて当然だ。
そっと、手に触れてくる。伝わってくるのは愛情と、穏やかな波。魂もまた同じように、穏やかなものだった。
『貴方なら使いこなす事ができると信じています。一つ経験者からアドバイスとしましては、振り回されない事です。コレは人の心の表面を知る事ができますが、表面は働きかけ次第で良くも悪くも変わるもの。貴方の導きの光で、踏み間違えそうな者を見つけ、照らして行く助けになれば幸いです』
「ナル……」
『私はこの力を悪用し、落ちる方向へと導きました。けれどそれが出来たのなら、逆もまたしかり。この力もまた、正しき事に使われれば浮かばれましょう』
やんわりと笑ったナルサッハの手が離れてしまう。同時に、処刑開始のドラの音が響いた。
「離せ!! 俺はこの国の王だぞ! 貴様等、ただで済むと思ってるのかぁぁぁ!!」
柱に括り付けられ、足元には沢山の薪が油をかけられているにも関わらず、キルヒアイスは尚も叫んでいる。
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