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【おまけ1】とある新妻の密かな愚痴(ラウル)
これは、まだジェームダルにいる頃、キルヒアイス討伐前のお話です。
午後の一時、仕事のなくなったラウルは訓練場の見える木立の根元に腰を下ろして、ぼんやりとしていた。
瞳はどこか寂しげで、表情からも不満が見える。にこやな彼にしては珍しい様子だった。
「ラウル、どうしたんだ?」
声がかかってそちらを見ると、汗を流したランバートとゼロスが近づいてくる。同じく団長を恋人に持つ二人とは、こうして話す事も多くなっていた。
「うん、ちょっとね」
「大丈夫か? どこか体調が悪いなら無理せず休んだ方がいい」
ゼロスが気遣わしげに言うのに首を横に振る。別に体調が悪いんじゃない。悪いのは……気持ちの方だ。
「シウス様と、何かあったのか?」
ランバートに問われ、ラウルの目が途端に胡乱げになる。妙に据わった目をしたからか、二人はビクリと肩を震わせた。
「ラウル?」
「何も? 何もないよランバート。どうしてそんな事聞くのかな?」
「ラウル怖い! どうしたんだ!」
「……別に」
本当は、寂しいのだ。
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