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私は貴方に生きて欲しい。貴方の治める世を見たい。絶望に落ちそうな私の心を救い上げる貴方だからこそ、今度は私が支えたい。
この日から、私は必死に自分を売り込んだ。どんな木っ端役人でもいいから、役人になることを目指した。振りたくない尾も振ってみせた。引きつりそうな心で愛想笑いをした。そうしてようやく、臨時の役人に取り上げられた。
そして同じ頃、私に思ってもみない申し出があった。
「え? 養子、ですか? 私が?」
私は現役の大臣をしているサルエンという若い男から、養子の話を受けるようになっていた。
彼は仕事は真面目で、主流派にしては珍しく金銭欲のない男でこれといった汚い話も聞かない。周囲からは「生真面目」という声が聞かれる。
最近妻子を亡くしたらしく、寂しい時を過ごしているというのも聞いた。
一見、悪くない。だが私は彼が苦手だ。触れると流れる感情は読み取れない。けれど、ドロリと絡むようにまとわりついて気持ちが悪い。
それでも私は自分の能力に自信をなくしていた。必要性が薄くなったのか、少し鈍感になっている気がしている。勘違いということもある。特にサルエンは言葉が聞こえるわけじゃない。あくまで印象なのだ。
「君は、宰相になりたいのだろ?」
「えぇ、まぁ……」
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