とある宰相の転落劇・3(ナルサッハ)

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「だが、現宰相の息子がいると難しい……というか、君の後ろ盾ではほぼ不可能だ。能力はあっても、あの男が地位を手放すとは思えない」 「……」  それは分かっているし、腹が立つ。現宰相の息子はバカだが、地位だけはある。いくら貢いでも私では足元にも及ばない。能力は私の方が高いはずなのに…… 「私は君の才能が潰されていくのは、惜しいと思っているんだよ」 「私の、才能?」 「頭もよく、機転も利く。君は国を回すために生まれてきたような才児だ」  まるで持ち上げるような言葉を疑うのは、私の醜さだろうか。どうにも疑いの目で他人を見てしまう。  だがサルエンは次に表情を少し悲しげなものに変えた。 「それにもう一つ。私は妻子を亡くして、跡取りがない。君のような優秀な子が跡取りであったなら、安心できるんだが」 「……考えさせてください」  悪い話じゃない。いずれは誰かの養子になって、足がかりにしなければと思っていた。そこに現役の大臣だ、渡りに船とも言える。  だがその一方で、都合が良すぎないか? まるで測ったようなタイミングじゃないか。触れた時の絡みつくような印象も嫌いだ。  ただ、嫌いだというだけで具体性がない。これで一言でも「抱きたい」とか「私のものだ」という声が聞こえたなら、躊躇い無く蹴りつけるのだけれど。     
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