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「だが、現宰相の息子がいると難しい……というか、君の後ろ盾ではほぼ不可能だ。能力はあっても、あの男が地位を手放すとは思えない」
「……」
それは分かっているし、腹が立つ。現宰相の息子はバカだが、地位だけはある。いくら貢いでも私では足元にも及ばない。能力は私の方が高いはずなのに……
「私は君の才能が潰されていくのは、惜しいと思っているんだよ」
「私の、才能?」
「頭もよく、機転も利く。君は国を回すために生まれてきたような才児だ」
まるで持ち上げるような言葉を疑うのは、私の醜さだろうか。どうにも疑いの目で他人を見てしまう。
だがサルエンは次に表情を少し悲しげなものに変えた。
「それにもう一つ。私は妻子を亡くして、跡取りがない。君のような優秀な子が跡取りであったなら、安心できるんだが」
「……考えさせてください」
悪い話じゃない。いずれは誰かの養子になって、足がかりにしなければと思っていた。そこに現役の大臣だ、渡りに船とも言える。
だがその一方で、都合が良すぎないか? まるで測ったようなタイミングじゃないか。触れた時の絡みつくような印象も嫌いだ。
ただ、嫌いだというだけで具体性がない。これで一言でも「抱きたい」とか「私のものだ」という声が聞こえたなら、躊躇い無く蹴りつけるのだけれど。
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