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どうするのが正解か、私の天秤は大きく揺れていた。
「ナル、庭に出ませんか?」
休日、呼ばれた私はアルブレヒト様と一緒に中庭に出て、よく一緒に過ごした木の根元に腰を下ろした。
キラキラキラキラ、木漏れ日が心地よく風が吹き抜けていく。
顔色の良くなったアルブレヒト様がそこにゴロンと横になる。そして、私にも勧めてきた。
草地に横になると感じる若葉の臭い、土の臭い。木の葉を透けて届く日の光。肌を撫でる心地よい風。瞳を閉じるとそこは、遠い故郷と錯覚するようだった。
「気持ちがいいですね」
「えぇ」
「……何を、悩んでいるのですか?」
「え?」
驚いて目を開けると、顔をこちらに向けたアルブレヒト様がジッと見ている。静かなのに逃げを許さないその視線に、私は嘘をつけない。
「最近、無理をしていませんか? 辛いのに笑っている貴方の姿を見ると、心が痛みます」
「無理などしていませんよ、我が君。貴方こそ、お体は……」
「体ではなく、心が無理をしていませんか?」
触れそうだった手を、ギュッと握られる。流れてくる、心配の感情。ここにきて一年以上が経ったんだろうと思う。あまりにあっという間で、もっと短いような気がしているけれど。
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