【残酷表現あり】とある宰相の転落劇・1(ナルサッハ)

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 それは東の町に起こった流行病の話だった。 「けっこう死者が出ているらしい」 「原因は?」 「調べている様子はない。あまりの死者数に病気の原因を探るよりも、神に祈る方に一生懸命になっているようだ」  大人達の言葉に、なんだか嫌な予感がした。  病気には原因がある。病気を連れてくる悪い動物なんかがいる事が多いらしい。これは本で読んだから、知っている。  こういう時は原因になる動物を探し出して駆除したり、病気を治す方法を探したりしないといけないらしい。  なのに、どうして神様に祈るのだろう。神様は生きている人間には、多く恩恵はくれない。天候や天災を避ける祭事は行われるけれど、それだって叶えられるかは神様の気分次第だ。  父も、長老も言っている。「神様は無慈悲な程に平等なんだ」と。  そんな神様だからどれだけ祈っても、病気を治してくれるなんて思えないけれど。  いや、一人だけ可能に出来る人がいるかもしれない。  もう少し森の奥へ入った里にいる少年は、ユーミルの生まれ変わりだと言われている。神様を体に降ろして未来を予知したり、災厄を避ける方法を教えてくれたりするらしい。  そんな凄い人なら、神様に言葉を伝える事ができるんじゃないかと思う。     
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