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「弟は優しくてね、私を逃がしてくれた。そして決して、自分が王位に就くことがあっても家臣達に飲み込まれないと誓い合った。そして死ぬまで、それを貫いてくれた。だからこそ、邪魔だったのだろうね。可哀想な死に方をさせてしまった」
「戦死なさったと……」
「孤軍奮闘の末だ。援軍を求めたが、来なかった」
「そんな……っ」
ではこの方の弟もまた、殺されたのと変わらないのか。
「遣いから話を聞いて、どれほど自らを責めたか分からない。アルブレヒトを連れて戻ってきて……再会した時には首から下は隠されていた。どれほどに詫びても、足りないほどだったよ」
「キルヒアイス様を引き取られたのですよね?」
「あぁ、そうだね。その頃既にあの子の母も亡くなっていたから。独りぼっちにするのは可哀想だったし、何よりアルには子が作れない。キルヒアイスを側に置く事に異論はなかった。けれどこの時、もうあの子は家臣達に取り込まれてしまっていた。私達兄弟の懐柔に失敗した奴等の行動は早かった」
腐っている。真っ当な人間を排除して、自分達の傀儡を育てて。そうまでして甘い汁が吸いたいか。国という大樹にしがみつき食い尽くす害虫と何が違うんだ!
憤慨する私の頬を包むように、陛下は触れる。憂いのある優しい笑みが、いっそう心に刺さった。
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