とある宰相の転落劇・3(ナルサッハ)

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「ナルサッハ、苦労をかけるね。だが、無理をしなくていい。アルブレヒトがどんな選択をするかは分からないけれど、お前の道を進んでいいよ。なんなら、こんな国奴等に渡してもいい」 「そんな!」 「そうして、故郷へ帰ってもいいんだ」 「え?」  故郷……帝国に? 「帝国は少しずつ変わっていくだろう。今の王太子は広く他国も見聞きし、人と交わる者と聞く。その子が王となれば、きっと世界は大きく動いていく。君たちエルの待遇も、変わるかもしれない。それに教会に助けを求めれば受け入れてくれる。聖ユーミルを柱とする教会だ、エルを迫害はしないと聞くよ」  帝国が、助けてくれる? 教会はエルを迫害しない?  知らない。そんな事、知らなかった。ではあの時、エルの悲劇が起こった時、もしも帝国の教会に助けを求めていれば母も姉も妹も、あんな悲惨な末路を歩まなくてもすんだのか?  でも、今更だった。それに今は、あの時代を一概に憎んでいない。もしもあの時帝国へと逃れていたら、私はアルブレヒト様に出会えていなかった。穏やかな平穏はあったかもしれないが、この出会いがなければ私は心からの安らぎや希望、未来を描いてはいなかった。 「アルブレヒト様に、ついてゆきます」  伝えると、陛下はどこか安堵したように微笑んでくれた。     
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