とある宰相の転落劇・3(ナルサッハ)

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 私はエトリムに頼んで、陛下の食事は勿論のこと、飲み水や寝所、香りまで怪しげなものが持ち込まれないかを監視してもらった。  心労などはあるだろうが、こんなに急激に体調が変化したのは何かしらの毒を考えたのだ。主流派にとって陛下やアルブレヒト様が上に立たれる現状は好ましくない。我慢の限界なのだろうと思ったから。  そうして数日で犯人は捕まった。メイドの一人が陛下の枕元に、毒の香を忍ばせていたのだ。  そうして役人の一人も捕まり、その後釜に私が納まった。臨時から、正式な役人となったのだ。穏健派と陛下の後押しがあって、ようやくだった。  私は気付かなかった。陛下暗殺をとらえず阻止して、役人にもなれて、浮かれていた。気付くべきだった。奴等の目が、私へと本格的に向いた事に。  役人として仕事を始めて少し。私はサルエンからディナーに誘われた。そこで、最後通告が行われたのだ。 「ナルサッハ、私の養子になる気はないかい?」  私はこの誘いを、未だに保留にしたままだった。その後も私は積極的に売り込んでいたが、彼以外は申し込みがない。このまま役人として実績を上げる事も考えるが、陛下の状態がこのまま快方へと向かうとも限らない。毒の影響はあれど、長年の心労が根底にある事は変わらないのだから。     
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