381人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
出来るだけ早く、後ろ盾は欲しい。その時、サルエン以上の地位持ちもいなかった。
「実は数人、養子にと申し入れがあるんだ」
「え?」
「私も少し、迷っていてね。個人的には君の才能を埋もれさせたくはないのだが……」
それは、早々に決めなければもう私にチャンスはないということか?
迷った。この男から感じる印象は変わらない。だがそのバックは、あまりに魅力的だ。アルブレヒト様が戻られる前に少しでも力をつけておきたい。役人になったとはいえ、底辺だ。掃いて捨てられる部分だ。
何処かで、警報は鳴っている気はした。アルブレヒト様の呼ぶ声も聞こえる気がした。けれど私は、焦っていたのだ。この国を、アルブレヒト様の帰る場所を守るのだと。
「分かりました。そのお話、謹んでお受けいたします」
私は地獄へのドアを、自らの手で開けてしまったのだ。
すんなりと養子となり、私はサルエンの屋敷に移った。そうして数ヶ月、私の仕事は驚く程に順調だった。地位も少し上げ、実力も発揮できている。
サルエンは時間が合えばディナーを共にしたが、心配された事は何もない。日々の事を話して、それで終わる。
全ては杞憂だった。やはり私のエルの能力は少し鈍っていたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!